意外と知らない「ビタミン」のホント④

1種類のビタミンを補うだけでは不十分

では、どうしたら上手にビタミンを摂り入れられるのでしょうか。それはやはり、日々の食生活を意識することです。

なにも食品成分表を見ながら毎食の栄養素をチェックする必要はありません。肝心なのは新鮮な食物を選んで食べることです。

また、自分の栄養管理を、医師や栄養士任せにしてはいけません。
 例えば肥満の場合、最近の栄養士の多くは〝専門家として肥満を改善する〞ためだけに、一日に摂取するトータルカロリーを減らす指導をします。

その結果減量は成功するかもしれませんが、カロリーを減らせばそこに含まれる栄養素も減るので、ビタミン不足になりかねません。 一方、骨粗鬆症予防にカルシウムを積極的に摂ると、血中にあるカルシウムの過剰分が尿と共に排出され、血中のビタミンも一緒に排出されてしまいます。つまり、カルシウムの摂り過ぎは、結果的に血中のビタミンバランスを崩してしまうのです。

カルシウムを多く摂れば骨が丈夫になるのではなく、骨内でのカルシウムとマグネシウムのバランスが重要なのです。

サプリメントに頼る前にまずは食品から摂る

肥満や病気対策に限らず、健康や美容目的で販売されているビタミン系のサプリメントも数多くあります。しかし、その多くは試験管実験の結果を元にして作られており、その成分が生体でどう機能するかまでは実証されていません。

そのため、本当に効果的な商品かどうかを自分自身で見極めなければなりません。食物に関しても、素材を極力そのままの状態で食べることが、自然なビタミン摂取につながります。例えば、アジア人に多いとされる脚気は、白米を常食にするようになってから増えたと言われています。

玄米を精米する際に、米ぬかに含まれるビタミンB1が失われてしまうからです。

 日本の食産業は実に多彩ですが、一方で、昔ながらの日本食の栄養バランスの良さが海外から注目を集めています。これらのニーズの中、総務省から研究補助金をいただき、全く食事に関する知識が無くても簡便にできる、画像入力タイプの個々人で可能な栄養の自己管理システムを作成しました。これは個々人の食事を登録することで、一日のエネルギーや三大栄養素、ビタミン、ミネラルの摂取量がわかるものです。

健康や美容のためにカロリーを気にするなら、これからは健康食を誇る日本人としても、ビタミンバランスを考えた食生活を心がけたいものです。

自分の栄養管理を自分自身で行うために

木村先生らが開設したwebサイト「健康栄養インフォメーション」。簡単なユーザー情報を登録後、“食事の栄養計算”を選択すると、1日に摂取した食事のメニューを入力する(選択式)だけで、栄養バランスをわかりやすくビジュアルで確認することができる。

http://www.health-info.jp/ 出店

※グラフの見方…赤文字の記号はそれぞれ次のビタミン類を表している。A:ビタミンA、D:ビタミンD、E:ビタミンE、K:ビタミンK、B1:ビタミンB1、B2:ビタミンB2、B6:ビタミンB6、B12:ビタミンB12、ナ:ナイアシン、葉:葉酸、パ:パントテン酸、C:ビタミンC

13種類あるヒトのビタミンの中でも肌にはやはりビタミンC①

ヒトは進化の過程でビタミンCを〝食べて摂る〞ことを選んだ!?
 ヒトが健やかに生きるために必要なものの一つにビタミンCがあります。しかし、ヒトは体内でこれを作ることができません。常に必要なものなのに、なぜ体内にこれを作る機能がないのでしょう。

最近の説では、本来ヒトはビタミンCの合成経路を持っていたと言われています。

しかしヒトは雑食なので、いろいろなものからビタミンCを摂ることができます。体内の合成経路からビタミンCを作るより、体外からビタミンCを摂った方がはるかに簡単なのです。そのため、進化の過程でヒトのビタミンCの合成経路は失われたのではないかと考えられています。

 

体に入ったビタミンは生命維持に優先して使われる
ビタミンは、ヒトの体内で補酵素として働きます。食物から摂り入れたビタミンは、小腸で吸収され、細胞に取り込まれ、残りが脳や心臓などに優先的に伝達されていきます(図1)。

なぜ脳や心臓が優先的なのかというと、これらが生きるためにまず必要な器官だからです。

 ある実験で、ネズミをビタミンC欠乏状態にしました。その後一気にビタミンCを与えてみたところ、ビタミンCを投与後のネズミの体内では、脳や心臓のビタミンCの濃度が5〜6割上がっているのに対して、皮膚のビタミンCの濃度はまったく上がりませんでした。

脳や心臓におけるビタミンCは、「ドーパミン」を出したり、筋肉を動かしたり、生命維持の働きに直接関係しているからです。

13種類あるヒトのビタミンの中でも肌にはやはりビタミンC②

不足しているにもかかわらず尿に排出されてしまう不思議

体内に摂り込まれたビタミンCが脳や心臓に優先的に伝達される一方で、肌は常にビタミンCを欲している状態です。しかし、脳や心臓にビタミンCが満たされると、残りは過剰分として尿と一緒に排出されてしまいます。これはなぜでしょう。
 似たような事例に、マグネシウムがあります。マグネシウムには、かゆみを引き起こす「ヒスタミン」の放出を抑えたり、表皮の分解や皮膚のバリア機能を促進する作用があります。しかし、ビタミンC同様、過剰分が尿に排出されてしまいます。また、ストレスでも尿への排出が促されてしまうため、血中のマグネシウムが減りやすい傾向があります。すると、それを補うために皮膚内のマグネシウムが血中に流されていくのです。その結果、血中のマグネシウム濃度は平常を保ちますが、皮膚内のマグネシウム濃度は下がり、これが肌トラブルの原因にも繋がります。私のクリニックでは、アトピー性皮膚炎の患者さんにマグネシウムを多量に与えた結果、劇的に肌がキレイになったという例があります。
 これらのことから、ビタミンCやマグネシウムが肌に届かず尿で出てしまう理由は、血中濃度が満たされた段階で、体が〝もうこれで充分だろう〞と判断してしまうからではないかと考えられます。

肌にビタミンCを効かせるために

 以前、ビタミンC誘導体クリームを使っても肌の状態が改善されない
患者さんがいました。その方の血中ビタミンC濃度を計ったところ、驚くほど低い数値で、壊血病の一歩手前でした。そこで、ビタミンCを静脈注射とスキンケアで徹底的に与えたら、あっという間に肌がツルツルになりました。ビタミンCには角質層のバリア機能を上げたり、血管の合成を促進させたり、さらにメラニンを退色させる作用があります。皮膚の断面図(図2)を見ると、毛細血管のさらに下(真皮の下層)に太い血管があります 。この血管に※栄養されている細胞は全身の10分の1くらいしかなく、ほとんどの細胞は毛細血管やリンパ管からの体液で※栄養されています。化粧品などで肌から摂り入れたビタミンCは、太い血管に届く前に、血漿やリンパ液などに吸収されてしまいます。また、血中のビタミンC濃度が満たされなければ、真皮にビタミンCを留まらせることはできません。そこで、健康な肌をつくるための近道として、まず静脈注射で血中のビタミンC濃度を上げ、そのうえで肌からもビタミンCを入れる方法があります。もちろん、C以外のビタミンも大事な働きがあるので、ビタミンCを はじめ各種ビタミンを静脈注射で体内に入れる、「カクテルビタミン注射」をすすめています。