ペプチドの美容効果は大きく、特に「新しい肌を作らせる」・「傷んだ肌を修復させる」という情報を持つものは、エイジングケア化粧品で注目の成分として活躍しています。例えば、「EGF(上皮細胞成長因子―ヒトオリゴペプチド―1)」は「肌を成長させなさい」という指令を出し、肌をイキイキさせる効果をが培養細胞などの実験で確認されています。
「FGF(線維芽細胞成長因子―ヒトオリゴペプチド―13)」は肌組織の生産工場である線維芽細胞に直接作用するので、コラーゲンやエラスチンの合成を促進することも同様の実験で確認されています。
このような生理活性効果を期待されたペプチドは、培養細胞を使った実験から効果を確認するとともに、安全性についても充分研究されてから、化粧品に配合されています。
新規に配合されている機能性ペプチドは、安全性が充分に研究されているものであれば、使用して問題無いでしょう。安全性に関しての情報は、各メーカーのホームページで公開されていたり、化粧品技術者会が公表しているものもあります。見つからなかった際は、使う前にパッチテストを行うことを心掛けましょう。
目次
再生医療と美容医療で使われるペプチドの力
ペプチドの中には、肌細胞の生産を活性化させる効果を持っているものがあります。また、肌細胞そのものを活性化させ若々しさを取り戻す効果を持つものもあります。このような効果から、シワやたるみなど肌の老化に抗って肌を若々しく回復させようとする「攻めのスキンケア」、いわゆるエイジングケア目的で、ペプチドを使ってみたい方は多いのではないでしょうか?
化粧品に配合されているペプチドの多くは、あらゆる角度から衰えた 肌を一掃し、生まれ変わらせる効果が期待できます。そのため、年齢による肌の悩みを解消したい方には、特におすすめの美容成分です。
美容医療でのペプチドの役割
医薬品として用いられるペプチドと化粧品に配合されるペプチドには違いがあります。
医薬品に用いられるペプチドは再生医療の一環で用いられていますが、その高い再生力から様々な可能性があり研究が進められています。昨年は再生医療用の「リコンビナントペプチド」を用い、細胞集合体と生体組織の間に血管を形成することに成功したという報告もありました。
このような、ペプチドの再生力は美容医療の分野でも注目されています。美容医療では、主に肌の再生への速さ、広い範囲での効果が期待できるペプチドが使われています。
例えばシワ治療に使われるペプチドは真皮内の線維芽細胞を刺激し、コラーゲンの生成を促進させます。作用の即効性が高い上に、肌自体が若々しく回復するので、経験した方の多くが効果を実感しやすいのです。しかし、副作用も考えられます。そのため、化粧品への配合は認められていません。
化粧品としてのペプチド
ペプチドを配合した化粧品を開発した、東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノアージュ院長今泉医師はこう語っています。
「私がペプチドを化粧品へ応用しようと思ったきっかけは、アメリカで出会ったやけど跡の治療クリームでした。私はこのクリームに配合された七種のペプチドが持つ肌再生効果に、感銘を受けました。
患者様が『ヤケド跡が治っただけではなく、肌にハリも出た』と大変喜ばれたのです。
つまり、ペプチドの持つ肌の再生力が、新しく肌細胞を生み出し、さらにコラーゲンの生成も促していたのです。
そこで肌に悩む多くの人々のために、このような魅力あるペプチドを化粧品に配合できないかと考えました。
現在の日本では、当時アメリカで出逢ったこれらのペプチドと全く同一のものを配合することはできないので、化粧品に配合できる範囲内で、同様の効果を期待できるペプチドを探しました。」
肌再生に働きかけるペプチド
「七種類のペプチドを選んでいますが、どれも肌再生に関わるものです。それぞれ作用するポイントが異なるものを選ぶことで、多面的な肌のエイジングケアを期待しています。」
毎日のスキンケアの中に、肌を回復させるエイジングケアを組み込むことは重要です。その際、ペプチドを配合した化粧品が強い味方になってくれるでしょう。
もっと肌のハリを実感したい、肌の弾力性を回復させたい、気になるシワを解消したい、目元のたるみを解消したいなどのエイジングケアには、ペプチドは特に優れた化粧品成分だといえます。またペプチド同士の組み合わせによって、さらに高い効果を期待できます。
化粧品への応用例
化粧品に配合されているペプチドは医薬品とは種類が異なるうえ、作用も限定されています。医薬品に比べると作用が穏やかで即効性は低いですが、それでも肌再生効果は充分に期待できます。また、医薬品に比べ、副作用などの安全性が高くなっているので、安心してスキンケアにお使いいただけると思います。
近年よく配合されているEGF(ヒトオリゴペプチド―1)は、もともと火傷による皮膚移植や角膜切開による傷の回復促進などの目的で使用されていたペプチドです。
発見された当初は大変高額な成分でしたが、バイオ技術の発達により化粧品に配合しやすくなりました。
●ターンオーバーを促進させる
●肌を強化する
●ヒトの成長ホルモンと同じ働きをする
●線維芽細胞を刺激する
●肌を健やかに整える
●血管やリンパの流れを活発にする
●表情ジワを緩める
医療では、ヤケドによる皮膚移植治療や角膜切開での傷の回復に用いられている。53個のアミノ酸からなり、表皮細胞のDNA合成と細胞分裂させる「シグナル因子(司令塔)」の役割を果たす。皮膚の新陳代謝を活性化させ、ターンオーバーを促進させる。細胞の成長を促進させる働きから、シミ・シワ・ニキビなど多くの悩みに効果的と考えられている。※ちなみに、ルミキシルペプチド配合の化粧品はシミに特化してます。
「ラミニン」(基底膜にあるタンパク質)に似た作用を持つ。基底膜上のタンパク質合成を促進させ、表皮と真皮間の結合を強化する働きがあり、肌そのものを強化できる。また、皮膚の新陳代謝にも深く関わっていると考えられている。老化によってできたシワを解消する効果が高く、ハリのある肌へと回復させる。肌を強くできるので、これから先の研究結果によっては幅広い活用が期待できる。
成長ホルモンに似た作用を示すペプチド。破損している細胞の再生を促進し、老廃物を排出させる作用があることから、ターンオーバーの促進に期待できる。また、脂肪を燃焼させる効果があるので、すっきりとしたフェイスラインに改善することも可能。
「線維芽細胞増殖因子」とも呼ばれる、アメリカで肌老化を抑制する特許を取得しているペプチド。FGFを肌に塗ると、線維芽細胞の数が増えたという報告がある。このことから、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸の増加が見込まれ、肌水分量の増加やシワ・タルミの改善が期待できる。
コラーゲン線維形成を正常に行う際に欠かせない「デコリン」と似た作用を持つペプチド。まだ発見されて新しく、コラーゲン産生を継続的に行う効果が期待できる。コラーゲン線維を束ねることで肌の密度を上げ、ふっくらした弾力性を回復させる効果がある。
瞼のむくみや目元のたるみは、血流の悪さやリンパの流れの悪さからくるものが多い。その血流やリンパの流れを改善させ、ハリのある若々しい目元に回復させる効果を持つのがこのペプチド。デリケートでケアが難しい目元に使え、たるみ・ハリのなさ・目の下のクマ解消にもつながるため、若々しくすっきりとした目元を取り戻す効果が期待できる。
6個のアミノ酸に酢酸が結びついたペプチド。「アルジルリン」や「アルジレリン」とも呼ばれている。筋肉の収縮を抑制することで筋肉の緊張をほぐし、細胞の膜タンパク質の動きをなくし、固定させる働きにより、表情ジワを軽減させる効果がある。表情ジワ治療に使用するボトックス注射に似ているため、「塗るボトックス」とも呼ばれている。
これからのペプチドに期待する機能。
注目しているペプチドは、『ヘキサペプチド― 11』です。これは紫外線ストレスを与えながら培養されたペプチドです。紫外線で受けた肌のダメージを補修する効果が備わっています。肌が紫外線で受けるダメージは思っているよりも高いですよね。
UVカット剤や美白化粧品でのケアだけでは、追いつかないことも多くあります。そこで肌そのものを紫外線から受けるダメージに対抗できるように、肌を強くしておきましょう。すると紫外線からのダメージでできるシワなどの老化を軽減できると考えられるからです。
ヘキサペプチド―11の効果が十分に生かされている化粧品の開発が今の課題であると言っても過言ではありません。実現すれば、紫外線で受ける肌のダメージは軽減されるどころか、回避できると期待できます。