最愛のペットを亡くしてしまうことで深い悲しみに襲われてなかなか立ち直れない、動物を飼育したことのない方や動物嫌いの方からは「たかがペットでしょ!」と共感してもらえない、周りからも心配されるし家族にも悪影響なので早く回復したいという方、ペットとの離別で悲しくて心が張り裂けそう、日常生活に支障が出るぐらいに精神的に不安定になり元気がでなかったとしてもそれはおかしなことではありません。
しかし、人間の精神は大きな悲しみに襲われたとしても、時間をかけてゆっくりとですが少しずつ回復して元気を取り戻していくものなのです。
ペットロスになった場合、どのような症状になり、どのような過程を経て元気な元通りのあなたに戻っていけるのか、悲しみの回復への過程を知ることでペットロスに立ち向かうことができます。
悲しみの過程については高名な研究者の学説が色々あるのですが、有名なのはエリザベス・キュブラー・ロスが余命宣告を受けた人がたどる悲しみの過程を5段階に分けた「悲しみの5段階」の理論、グリーフワークの第一人者、精神科医の平山正実の4段階説、アルフォンス・デーケンの12段階説、などです。
これらの説の内容を比較してみるとどれも似ていて、より細かく分類しているかどうかぐらいの違いしかありません。ロスの5段階説には「交渉」、いわゆる「ペットの死に対しての神頼み」的な項目が見られますが、宗教心が比較的薄い日本人にはあまりない感覚かと思われますので、ここでは平山正実の4段階説を中心にしてペットロスの悲しみの過程を考えてみます。
①ショック、現実の否定、否認
ペットの余命がまじかに迫っていることを知った、ペットが突然いなくなった、死んでしまったという時、大きなショックが襲い現実を受け入れることができずにまず否定の感情が出てきます。
「そんなはずがない、あんなに元気なのに。」
「自分の元から突然いなくなることなんてありえない。すぐ帰ってくるだろう。」
「まだ若いし死ぬはずない。」
などと今起きている悲しい事実を否定てしまいますが、それは人間がどんな悲しみにあった場合にもまず取ってしまう行動です。
誰でも今までの人生において悲しい出来事はありましたよね。その時も同じような状態になりませんでしたか?
この状態が全く自然なことです。動揺してしまって他の事が何も手につかない、頭から離れない、食事や睡眠すらとれないほど混乱した不安定な状態に陥るかもしれませんが、時間はかかりますがいずれこの状態からは少しずつ回復してきます。
②怒りの状態
悲しい現実を認めないといけないとわかった後、次には怒りの感情がでてきます。
つまり、こんな辛い現実が自分の身にふりかかってきたのは誰のせいなのか、なぜこんなことになったのか、と理由を探し始める訳です。
ペットが事故死したならきちんと管理していなかった自分のせいだと自分を責めることになるし、病死したならもっと早く病気に気づくべきだった、もっと世話をしてやるべきだったと自分を責めます。家族の助けや理解がない、自分だけが辛い思いをしていると身近な家族に恨みの感情が湧いてくるかもしれません。
獣医師の治療が不十分だったと獣医師や動物病院に怒りをぶつけるかもしれません。
健康で元気に暮らしているペットを連れている人を見たら、どうして自分のペットだけがこんな辛いことになったのか、と全くの他人にさえ怒りが向くかもしれません。 怒りの対象が自分に向けられてしまうと深い自責の念に襲われ続けることになり、なかなかこの状態から回復できないので注意が必要です。
まだ深い悲しみと混乱の状態にあるので、正常な思考ができずに感情が不安定で、自責の念に襲われて苦しんだり他者に責任転嫁して怒りをぶつけようとしたり、周りに当たり散らしたりと心が落ち着きませんが、時間が経つにつれてこの状態も落ち着いてきます。
③抑うつの段階
怒りがおさまって現実をもう認めるしかないと悟った状態です。どうやってもいなくなった、亡くなったペットが自分の元に戻ってくることはない、と辛い事実を受け止めます。しかし、まだ悲しみが癒えた訳ではないので深い絶望感、喪失感に襲われて抑うつ状態になります。
外出する気力もない、誰とも会いたくない、話したくなくて引きこもってしまう、日常生活を何とか過ごしているけれど一人になると悲しみに襲われて沈み込んでしまう、という状態です。
この状態から回復するには時間がかかります。周囲の助けも必要かもしれませんし、あまりにも抑うつ状態が続いて日常生活に支障がでるようなら、カウンセリングや精神科医の受診も検討してみても良いかもしれません。
誰かに自分の悲しみを話すことで心が解放されて悲しみを少しずつ和らげることはできます。
④解決、回復の段階
時間はある程度はかかりますが、悲しみが徐々に薄らいできて日常生活が普通に送れるようになった段階です。
完全にペットのことを忘れ去った訳ではありません。
いつも心のどこかにはいてふと思い出したりするのですが、ペットを飼っていて良かった、楽しい思い出をたくさん作ってくれてありがとうとペットに感謝し、これからの自分の人生を頑張って生きようという活力が湧いてきます。
毎日落ち込んで泣きわめいている段階の状態から考えるとこんな平穏な生活がまた取り戻せるということは信じられないかもしれませんが、どんな深い悲しみも時が経つにつれて和らぐものです。ペットのことを悲しまなくなった自分が薄情なのでは、ペットに対して申し訳ないと自分を責めるかもしれませんが、そんなことはありません。また新しいペットを飼おうかと考え始める人もいるかもしれませんが、それがペットロスからの解決になることもあります。
新しいペットを迎え入れたなら、大切にきちんと飼育してまた楽しいペットとの暮らしを築き上げていけば良いことです。この段階まで回復していれば大丈夫でしょう。