私が看護師として勤務しているクリニックに物忘れ外来で受診したTさんは、アルツハイマー型認知症と診断され、リバスタッチパッチの処方が開始されました。Tさんの薬物療法についてお話ししていこうと思います
物忘れ外来に受診された Tさんは、奥様と一緒に受診されました。
どのような症状で困っているのか尋ねると、
「最近、物忘れが多くなり、時々道も解らなくなるんです。迷子にまではなった事はないんですが、どうやって帰れば良いのか途中で解らなくなりました。人に道を聞いて何とか家に帰ってくる事が何回かあったので、もしかして認知症かも?と思って受診しました」
ということでした。
診断をするためMMSEというテストとMRIをしました。
MMSE17点とMRIの画像では海馬の萎縮があることから、アルツハイマー型認知症と診断されました。
日中、奥様は仕事へ出かけるため、内服管理を行う事が難しい事をふまえて、医師と家族と治療方針を相談した結果、リバスタッチパッチを開始することになりました。
リバスタッチパッチ4,5mgから開始し、4週間後に9mgへ変更しました。
薬を開始してから認知症としての症状は、大きな変化もなく安定していたのですが、9mgへ変更した頃から、皮膚の痒みを訴えるようになりました。
この痒みは、リバスタッチの副作用の一つです。
そして、痒みだけではなく、皮膚の発赤も出現してきました。
これ以上痒みや発赤が酷くならないように、軟膏の塗布の仕方や、お風呂に入った際には綺麗に洗い流すこと、また貼付する場所は毎回変えるように指導しました。
指導を行なったかいがあり、皮膚の痒みや発赤は悪化せずに済んだのですが、貼り続けて2ヶ月経った頃に、家族がこんな相談をしてきました。
「道が解らなくなったり怒ったりするのは酷くなっていないので、薬が効いているのだと思います。認知症のせいなのか解りませんが、食事が以前の半分になりました。食べるよう声をかけても食欲ないと言って食べてくれないんです。これは、認知症のせいですか?それとも薬のせいですか?」
といった内容でした。
認知症の薬の中でもリバスタッチパッチは消化器症状が出にくいとされていますが、中には貼付剤でも副作用が出現する方もいます。
しばらく点滴での治療を継続するため通院してもらったのですが、食欲は戻りませんでした。家族と相談した結果、リバスタッチは一度やめて内服薬であるアリセプトに変えてみる事になりました。
薬を変えてから徐々に食欲も戻り、5キロ減った体重も元に戻りました。
アリセプトに変更して半年が経ちますが認知機能もほとんど変わりなく、安定した生活を送る事ができています。