画像【薬の通販比較サイト】より

私が受け持った認知症の高齢者の方に投与されていたのはアリセプトという薬です。

この薬は、認知症治療薬として長く使われてきた薬で、特にアルツハイマー認知症の方に投与されている薬です。

 

脳内の記憶や伝達にはアセチルコリンという神経伝達物質が必要です。コリンエステラーゼという分解酵素がアセチルコリンを分解し、脳内のアセチルコリンを減らしてしまうのです。

 

アリセプトはコリンエステラーゼと結びついてその働きを抑えることでアセチルコリンが減らないようにする薬です。唾液だけでもすぐに溶けるため(以下「OD錠」とします)、呑み込みが悪い高齢者の人には飲ませやすい薬です。

 

何人かの認知症の高齢者が、OD錠のアリセプトを服用していました。その中で一人の女性(以下「A子さん」とします)はその薬を飲みだしてから変化されたことがあります。それは、A子さんの意識がはっきりしてきたことです。少し認知症が進んできた様子が見受けられたのですが、その薬を服用した後は、しっかり話されて、受け答えが明瞭になってきたのです。

 

A子さんは主介護者のご主人に対しとても従順で、忍耐強い人でした。アリセプトを服用されてから、しっかりしてこられた半面、NOと言って自己主張されるようになり、ご主人に反抗的な態度をとることもよくあったようです。ご主人は「これほどあんたのためにしているのに・・・。でも、仕方がない」とよく言っておられました。

 

A子さんは、その時によってぼーっとしている時もあり、必ずしもいい日ばかりではありませんでした。この薬の副作用として、脳内のアセチルコリンが増加するため、興奮やイライラ感、落ち着きのなさなどが出てきて食欲不振になることがあるとありますが、A子さんは、自己主張が出てきて食事に注文をつけたり、ご主人に文句を言ったりという症状だけでした。

 

もう一人の方は、一人暮らしの80代の高齢者の女性でした。(以下「B子さん」とします)マンションの下に病院があり、病院の電話番号を机の上に置いていて、病院にすぐにかけられるようになっていました。最初3mgのアリセプトから初めて、次に5mg、10mgに増えていきました。1日1回の処方で、リバスタッチ・イクセロンパッチ(貼り薬)も貼っていました。物を入れた場所をいつも忘れてしまいましたが、病院に行くことや甥に電話をすることは忘れていませんでした。

 

テレビをあまり見なくて、じっとされていることが多い生活ですが認知症でありながらも在宅で長く生活できたことはアリセプトを服用し、パッチ剤を貼っていたからだと思います。服用とパッチ剤を貼ることはヘルパーがしていました。

 

B子さんは食が細いのでそれほど召し上がりませんでしたが、ヘルパーの買ってきたものと自分の作ったものを日々の食事にしていました。食が細いのはもともとですが、薬の副作用でそうなっていたのかはっきりはわかりません。その方は一人暮らしだったので最後は施設に行かれました。

 

この薬の効能が、目に見えて変化したということははっきりわかりませんが、認知症の進行を抑えて在宅での生活を少しでも長く続けられていたのだと思います。