人はさまざまな菌に接触しながら生きています。カビはその菌類の中の「真菌(しんきん)」と呼ばれる部類です。カビと言えば夏型過敏症肺炎をひき起こすトリコスポロンを紹介しましたが、他にもカビの名前が病名に含まれるものも存在します。

<気管支肺アスペルギルス症>

この病気の特徴として、もともと気管支喘息(ぜんそく)に罹っている人がなり易いということ。「アスペルギルス」と呼ばれるカビの一種に反応するアレルギー性の病気です。通常のカビによるアレルギーで起こる咳、たん、微熱で受診しレントゲンなどの検査を行ったとします。胸部の異常は見つけにくいとされる中、気管支肺アスペルギルス症は胸部のレントゲンやCTの検査で異常が発見されることがあるというのです。
気管支肺アスペルギルス症に罹った場合、喘息の治療である吸入ステロイドや気管支拡張剤ではなく、吸入ステロイドと抗真菌剤での治療をします。これは正にカビが原因であるがゆえの治療法です。
喘息の発作ですらとても苦しい思いをするのですから、症状が出たら気管支肺アスペルギルス症であることを早期に発見することが重要となってきます。

<クリプトコッカス症>

この病気は、人以外に犬や猫などのペットも感染する人獣共通感染症です。病原菌は鳥の糞、例えばハトなどの糞や土壌の中、腐敗した植物などの中で育つクリプトコッカスと呼ばれる酵母。これは自然界の広範囲にわたって育つ酵母の一種であり、空気中に舞い散ったものを呼吸により鼻や口から吸いこむことで感染するのがほとんどです。通常はクリプトコッカスを吸い込み、感染していても発症しないでいることの方が多く、免疫力が落ちると活動を始める「日和見感染(ひよりみかんせん)」を起こします。この場合は鼻水から始まり脳や目、肺などあらゆる臓器に広がっていきます。症状としては、髄膜炎、脳炎、視神経炎、網膜剥離などがあります。
発症すると怖いので、気を付けるとしたらクリプトコッカスを吸い込まないことよりも、免疫力を低下させない努力をした方が良さそうです。もちろんベランダなどの鳥の糞を放置しないこと、むやみに糞だらけの場所に近づかないことも大事です。人だけでなくペットへの感染もあるので配慮が必要ですね。

カビによるアレルギー疾患には、やはり免疫力が大きく影響していることが伺えます。通常なら発症しないものでも免疫力が低下することで、身体が過剰な防御反応を起こしてしまいます。たかがカビ…と侮らず、カビの季節には十分な対策を心がけたいものです。