紫外線のダメージは肌内部に蓄積
サプリメントや化粧品でしっかりと肌をケアしているはずなのに、満足がいかない経験を持っていないでしょうか。もしかすると、何か見落としがあるのかもしれません。
健康な肌を作るために気を使わなければいけないことは、二つに大別できます。一つは栄養状態・スキンケア・規則正しい生活といった、自分でなんとかできる内的因子、もう一つは気温・湿度・季節変化など、自分の生活圏をとりまく外的因子です。室内で生活する分には、エアコンや加湿器などを利用し、ある程度コントロールできますが、一年中室内で生活するわけにはいきません。また意識していないと忘れてしまいます。外的因子は自分の都合ではなかなか変化させられないのです。
太陽光もまた、外的因子の一つです。太陽光には体内時計の調整や体温を調節する作用があり、健康を維持する上で、重要な働きをしています。すなわち、太陽光を完全に遮断するわけにはいかないのです。
太陽光に含まれる光の中で、特に紫外線は悪者と考える方が多いでしょう。しかし、紫外線には体内で活性型ビタミンD3の合成や、皮膚表面の殺菌作用があります。また、人工的に作られた紫外線は、アトピーの治療に利用されています。「紫外線はシミ・シワ・皮膚がんのもと」のようなマイナスのイメージが強いですが、プラスの作用もあるのです。
本来は、紫外線によるダメージだけを防御・修復しつつ、プラスの作用が得られる短い時間だけ日に当たるのが理想的です。

 

 

紫外線のダメージを考える

ikasu_02紫外線は長波長域からA波(UVA)・B波(UVB)・C波(UVC)と分類され、このうちA波とB波が地表に降り注いでいます。

UVAは肌深く、真皮から皮下組織近くまで到達し、線維芽細胞を弱体化させます。 これがシワやたるみの引き金となります。 また、UVAが表皮を通過する際に発生する活性酸素によりメラニン色素が酸化し、すぐに黒化することが知られています。

ただし、この黒化は紫外線から離れるとすぐに元に戻るため、肌へのダメージは少ないでしょう。一方、U V B は約90%が表皮内に吸収されます。 UVBは紅斑や水疱を引き起こした後、時間とともにメラニン色素の産生を進め、緩やかに肌を黒くします。さらに、表皮細胞のDNAを損傷させる力があり、機能が狂ったメラノサイトが出現すると、これがシミの本体となります。
シミや紅斑以外にもUVBによるダメージはあります。

UVB量の多い地域ほど皮膚がん患者が多いという研究データがあり、UVBによるDNAの損傷に加え、紫外線自体に免疫抑制作用があることがわかってきました。20年近く前には日光浴は健康のために必要との認識でしたが、これらのダメージが深刻なことから、現在では日焼け止めが必須と考えられるようになったのです。  

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紫外線から肌を守るために

地表に注がれる紫外線の量は地域や季節によって異なります(図3)。 また、標高が1000メートル上昇すると紫外線量が約15%増加します。 一日当たりの紫外線量を見ると、12時頃をピークに10時から14時までの紫外線量が約60%を占めます。

人に備わっている紫外線の防御機構は ①メラニン色素を作る、 ②角質を厚くする、 の二通りです。 ①は主に黄色人種や黒色人種に強く、②は白色人種に特に強く備わっています。 しかし、この防御機構だけでは不充分です。

紫外線が強い時間帯の外出を控えるなど、生活の中である程度意識することが大切です。

そして、外出の際は帽子やサングラス、袖の長い衣類といった物理的な防御、サンスクリーン剤による化学的な防御を行うといいでしょう。 現在日本ではSPFが15以上の化粧品を日焼け止め効果があると定義しています。

SPFとは「UVBによって紅斑が発生する時間をどれだけ遅らせるか」の指標です。数値が大きいほど効果時間が長くなります。夏の強い紫外線量の場合、約20分遅らせてSPF1くらいです。もちろん、紫外線の強さや個人の体質でばらつきが出ますので、用途の目安と覚えておきましょう。

UVAに対する防御力の指標はPAです。UVAによる黒化を遅らせる時間を、プラス記号を使い四段階にわけたものです。もともと三段階でしたが、測定技術が進歩したため、近年見直されました。SPFとは異なり、PA+で約何分の効果という明確な数値はありません。

UVAは光老化に関連していると古くから考えられてきましたが、UVBに比べ測定技術の確立が遅れたため、最近まで科学的な証明ができませんでした。

近年、ようやくUVAの重要性がわかり始めてきました。

サンスクリーン剤には紫外線反射剤と紫外線吸収剤の二つのタイプがあります。紫外線から肌を守るという面で「どちらが良い」ということはありません。 自分にとって使い心地がよく、継続して使えるものがおすすめです。

また、紫外線が肌に当たると活性酸素が発生します。そのためサンスクリーン剤を使う際にフラーレンやビタミンなど抗酸化成分を合わせて使うと、より効果的です

 

紫外線から受けたダメージを修復するスキンケア

日焼け止めによる紫外線の防御は大切ですが、紫外線を完璧に防げているかはわかりません。それは紫外線によるダメージが肌に現れるまで時間がかかるためです。肌の内部では「見えないダメージ」として蓄積されている可能性があります。
紫外線によるダメージの原因は活性酸素によるものが主です。よって、抗酸化成分を摂り入れることで活性酸素の発生を抑制すれば、紫外線によるダメージを緩和することができます。
この他、ダメージを具体的に見ると修復に必要な成分が見えてきます。

 真皮内ではコラーゲン・エラスチン線維の変性、線維芽細胞の減少が起こります。線維芽細胞は真皮内でコラーゲンやエラスチン線維を合成しているため、減少すると線維が減少し、徐々にシワやたるみを構築していきます。コラーゲン合成促進効果のある成分としてイソフラボンやピクノジェノール®、線維芽細胞を活性化させる成分としてCoQ10があります。真皮層まで届けるために、肌に塗るよりもサプリメントとして、体の内側から届けたほうが効果的です。
表皮内ではメラノサイトの暴走、皮膚表面水分量の減少、表皮バリア機能の低下が起こっています。暴走したメラノサイトを正常化することは難しいですが、ビタミンCはメラノサイトを弱体化させます。皮膚の水分量が増えると表皮バリア機能も正常化するので、ヒアルロン酸やセラミドなどの保水成分を使うこと。そして、適度な油分で角質表面に膜を作り水分の蒸発を防ぐこと。すなわち、しっかりと保湿ケアをすることが理想です。

 

まとめると、ポリフェノールやビタミンなどのサプリメントと保湿化粧品による丁寧なお手入れを行うということです。特別なことはしていないように感じるかもしれませんが、最も大切な方法です。
紫外線は目に見えません。また一つ一つのダメージも蓄積されるまで表面化しません。つまり、私たちはどのくらい紫外線のダメージを負っているかすぐにわからないのです。ダメージがシワやシミとして表面に現れた時は、相当なダメージが蓄積された状態です。ですから、日常のケアを丁寧に行い、ダメージが表面化しない状態を維持しなければいけません。一番重要なことは、生活する上で肌へのダメージが常に蓄積されていると意識することです。

 

 

老化を進める光は紫外線以外にも存在

皆さんは外出の際、紫外線さえ防御すれば、光老化の予防は大丈夫だと思っておられませんか?
今までは若々しさを維持するために、紫外線の防御が注目されてきました。しかし、これからは近赤外線の防御も必要なことだと認識してください。

私は光老化の原因となる光のことを総称して「老化光線」と呼んでいます。老化光線の代表はもちろん紫外線です。しかし近赤外線も老化を促進させているのです。ここでは近赤外線を防御する必要性についてお話をさせていただきます。

地表に注ぐ太陽光に含まれる光線で重要なものは、紫外線、可視光線、そして、近赤外線です。そのエネルギーの比率は、紫外線は10%以下、可視光線が40%くらい、近赤外線が50%くらいを占めています(図1)。

そして近赤外線がシワやたるみなどを引き起こす、とても強い生理作用を持っていることが、私たちの研究で明らかになりました。