誰もが一度は見たことのありそうな、食パンに生えたカビ。緑色で大小さまざまな水玉状態。どうです?見覚えはないですか?
ほとんどの人は、カビが生えたら捨ててしまうでしょう。それは正解です。

そもそもカビは表面に見えている部分だけでは無く、食品の内部にまで根っこを生やしているのです。まるで植物のような性質を持ったカビは、「基底菌糸(きていきんし)」と呼ばれる根っこ、「気菌糸(ききんし)」と呼ばれる茎、そして「胞子(ほうし)」(これは植物でいう種や実のようなもの)で構成されています。
表面で見える部分は「気菌糸」と「胞子」だけなので、削ったり洗ったりしても、食品の中の基底菌糸までは取り除くことは出来ていません。
表面のカビを取り除いただけでは、基底菌糸だらけの食品を食べることとなり、食中毒として症状が現れてもおかしくは無いという事です。

「カビ毒!」「発がん性?」ってなに!!

数あるカビの中には、菌そのものが毒を分泌するものが存在します。それらが分泌した毒の総称を「マイコキトシン」といい、すぐに死をもたらすような性質では無く、蓄積されて病気を発症してしまうといった特徴があるのです。

例えば、カビ毒マイコキトシンの中でも「アフラトキシン」は「アスペルギルス属」のカビが分泌する天然の発がん性物質の1つです。主にアーモンドやヘーゼルナッツ、ピスタチオ、トウモロコシ、ハト麦、そば粉などに発生します。これらの食品によるカビ毒の被害も報告されているようです。

「アスペルギルス属」に分類されるカビには、こうしたカビ毒を発生するものもあれば、食品の加工に欠かせないカビもいます。「コウジカビ」がそうです。味噌や醤油などお馴染みの食品には、この「コウジカビ」が利用されているのです。同じ「アスペルギルス属」なのに食品に利用可能なものと、有害なものがあること自体驚かされますね。
他に、ペニシリウム属の「アオカビ」はブルーチーズには欠かせないカビだったり、抗生物質(ペニシリン)を分泌したりと、意外な活躍をしているようです。

食品に生えるカビの性質には、面白いくらい個性があります。有害、無害に関係なくカビは繁殖するのに場所を選んで生えているのです。分りやすいところで言うと、オレンジだとアオカビが生えやすく、トマトやきゅうりにはクロカビが生えやすいなど、食品だけでみてもカビには好き嫌いがあるようです。カビが繁殖するのに必要な栄養や水分などが食品によって異なるため、カビと食品の相性もそれぞれに関係があるのですね。

カビの意外な危険性を改めて思い知らされたようで、これからの季節には特に気を付けたいものです。