目次

【テーマ①】認知症の症状とは

「最近物忘れがひどいな」と思うことは誰もがあります。
皆さんも父親や母親と話しをしていて、「もしかして認知症?」と考えてしまった経験があるのではないでしょうか。
しかし、実は加齢による「物忘れ」と「認知症」は全く違います。
まずこの加齢による物忘れと、認知症の違いについて説明したいと思います。

加齢による物忘れと認知症の違い

加齢による物忘れと、認知症の決定的な違いは、皆さんの頭の中、つまり脳のメカニズムの違いとも言えます。
まず加齢による物忘れの場合、単純に脳の老化によるものだと言われていますが、認知症の場合何らかの病気により、脳の神経などが壊れてしまったがために起こる症状です。
わかりやすく言うと、物忘れの場合本人は忘れっぽいことを自覚しているのですが、認知症の場合忘れてしまっているということ自体を忘れています。
人により差はありますが、あまり進行しないのが物忘れ、進行してしまうのが認知症です。
さらに、認知症の場合、判断力の低下といった症状も現れるので、日常生活にも支障をきたします。
では具体的に認知症にはどのような種類があり、どのような症状が現れるのでしょうか?

全認知症の約85%を占める三大認知症

アルツハイマー型認知症という種類の認知症が、最も聞いたことのあるタイプの認知症ではないでしょうか。
実際に全体の半数、約50%がこのタイプです。
次いで全体の約20%を占める、レビー小体型認知症、15%の血管性認知症、3つのタイプの認知症が三大認知症といわれています。

①アルツハイマー型認知症とは?

物忘れから気付く事が多く、徐々に日常生活に支障をきたします。
さらに新しいことを思い出せなかったり、記憶できなくなったりします。
また、徘徊などの症状が現れることがあります。
時間や場所が分からなくなるというのも特徴的です。
ご飯を食べたことを忘れている、ということもあります。
男女比では女性のほうが多いようです。

原因は?

原因は明確にはまだ解明されていませんが、脳に異常なタンパクがたまり、神経細胞を破壊して、脳がだんだんと萎縮してしまうといわれています。
記憶をつかさどる、海馬という部分から萎縮が始まるようです。

②レビー小体型認知症とは?

実際には見えるはずのないものが見える幻視や、眠っている間に奇声や怒鳴り声を上げるといった異常行動が見られます。
また、手足が震えるなどのパーキンソン症状が現れることもあります。
この認知症の特徴は、調子の良い日と悪い日の差があることです。調子の良い日は頭がはっきりとしているのですが、そうでない日はボーっとしているということがあります。

原因は?

レビー小体というたんぱく質の塊が、脳の神経細胞の中に現れます。
やがてそれが、大脳全体に広がると認知症になります。

③血管性認知症とは?

脳の血管が詰まる脳梗塞や、血管が破れてしまう脳出血によって起こる認知症です。
障害の起こる場所によっても症状が異なります。
身体症状として手足のしびれなどが残ったり、言語障害などが残る場合があります。
認知機能は残る場合が多いため、比較的記憶力や判断力は残っていることが多いのも特徴です。


認知症の種類と、物忘れとの違いについて紹介してきました。
徐々に脳が破壊される、考えただけでも恐ろしいですが、現在は有効な予防法もありますし、症状を改善する薬もあります。
ご家族や周りの方がよく観察し、早期発見・早期治療につなげられるよう心掛けていきたいですね。

【テーマ②】認知症テストでセルフチェック!

医学の進歩や新薬の登場によって、早期発見が望まれる認知症。今回はその認知症を発見できる「認知症テスト」について紹介したいと思います。

国内で最も使われるテストは長谷川式

認知症が疑われた時、何科の病院で診てもらうのが良いでしょうか?
これだけ高齢化が進んだ現代においても、「認知症科」というものは存在しません。
精神科、神経内科、内科などでチェックを受け、治療してもらうことができますし、最近では「物忘れ外来」を標榜しているお医者さんもあります。

ではそれらの病院で受診したときに、一体どのようなテストを受けるのでしょうか。
最も使用される認知症テストは、改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R・以下長谷川式)というテストです。
なんだか難しそうな名前で、難しいテストを行うのかとも思えますが、そんなことはありません。
いくつかの簡単な質問に答えて、点数により認知症を疑うもので、項目さえ分かっていればご家庭でもセルフチェックができるぐらい簡単なものです。
認知症を疑ったらぜひ一度チェックしてみてください。

長谷川式について

長谷川式のテストでは、全9問、30点満点で、20点以下なら認知症を疑います。
11~19点で中度の認知症、10点以下で、高度の認知症が疑われます。
見当識といわれる、「今はいつで、どこにいるのか?」といった簡単な認知機能に関する質問が多く、アルツハイマー型の認知症の発見に大いに役立っています。

では全9問の長谷川式を以下引用します。
(筆者の解説を加えている個所もあります)

1. お歳はいくつですか? (2年までの誤差は正解) 配点1点
2年までの誤差は正解で1点。

2. 今日は何年何月何日ですか? 何曜日ですか? 配点4点
年、月、日、曜日が正解でそれぞれ1点ずつ。

3. 私たちがいまいるところはどこですか? 配点2点
自発的にでれば2点、5秒おいて家ですか?病院ですか?施設ですか?のなかから正しい選択をすれば1点

4. これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますのでよく覚えておいてください。 配点3点。
3つ復唱できたら3点、2つ復唱で2点、1つのみ復唱で1点。以下の系列のいずれか1つで 採用した系列に○印をつけておく。
1: a)桜 b)猫 c)電車
2: a)梅 b)犬 c)自動車

5.100から7を順番に引いてください。 配点2点
100-7は?、それからまた7を引くと? と質問する。最初の答えが不正解の場合、打ち切る。
93が出たら1点、86まで出たら2点。

6. 私がこれから言う数字を逆から言ってください。 配点2点
6-8-2、3-5-2-9を逆に言ってもらう、3桁逆唱に失敗したら、打ち切る
2-8-6が言えたら1点。9-2-5-3も言えたら2点。

7. 先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。 配点6点
自発的に回答があれば各2点、もし回答がない場合以下のヒントを与え正解であれば1点
a)植物 b)動物 c)乗り物

8.これから5つの品物を見せます。それを隠しますのでなにがあったか言ってください。 配点5点
時計、鍵、タバコ、ペン、硬貨など必ず相互に無関係なもの

9.知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。 配点5点
答えた野菜の名前を右欄に記入する。途中で詰まり、約10秒間待っても出ない場合には そこで打ち切る。
0~5=0点、6=1点、7=2点、8=3点、9=4点、10=5点

引用元:アルツハイマー型、レビー小体型認知症を支えるアリセプト www.aricept.jp

またこちらは医療コミュニケーションセンターが発信している動画『長谷川式認知症スケール(HDS-R)の実施の仕方』です。
動画で見るとさらに間の取り方が分かりやすいでしょう。
ぜひご参照ください。

意外と簡単なのでセルフチェックもできそうですね。
しかし、逆に言うとその簡単な事ができなくなる、理解できなくなるのが認知症の恐ろしさです。
「おかしいな」と思ったら認知症テストを受けられることを強くおすすめします。

【テーマ③】認知症の薬一覧

認知症にかかると、早い人で3.4年、遅い人だと10年程度の時間をかけて徐々に記憶力判断力が低下し、今まで簡単だった事ができなくなり、高度の認知症になると徘徊などの症状が現れてしまいます。

徐々にそして確実に、われわれの頭を蝕んでいく認知症という恐ろしい病。
しかし目覚しい医学の進歩によって、不治の病だった認知症にも変化が見られます。

それは認知症の進行を遅らせることのできる「薬」の登場です。
あくまでも、進行を遅らせるものであって失われた記憶力や判断力を取り戻す、いわゆる治す薬ではありません。

今回はこの「救世主」ともなり得る認知症の薬について紹介したいと思います。

日本で認可されているのは4種類の薬

現在日本で認可されている認知症の薬は次に紹介する4種類です。アリセプト(ドネジベル)レミニール(ガランタミン)リバスタッチ・イクセロンパッチ、メマリー(メマンチン)の4種類です。

このうち、アリセプト、レミニール、リバスタッチ・イクセロンパッチの3種類はアセチルコリンエステラーゼ阻害薬という分類がされていて、効果などもある程度共通しています。そのため、薬の併用はできません。

メマリーという薬は分類が少し違っていて、NMDA受容体拮抗薬という種類の薬です。分類が違うため、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬との併用も可能です。

1.アリセプト(ドネジベル)について

アリセプトはアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症に効果があり、1999年にエーザイ株式会社より発売され国内外で大きなシェアを持っています。
発売当初はアルツハイマー型認知症にのみ効果があるとされてきましたが、臨床試験の結果2014年よりレビー小体型認知症にも効果があるとされ、幅広く使用されています。

水なしでも飲むことのできる、口腔内崩壊錠、ハチミツレモン風味のゼリータイプ、ドライシロップタイプが用意されていて患者さんの飲みやすいタイプの薬が選択できます。

2.レミニール(ガランタミン)とは

レミニールは軽度・中度のアルツハイマー型認知症に効果がある薬で、2011年から、レミニールの名前でヤンセンファーマ株式会社から発売されています。

人間の脳は神経伝達物質によって記憶などを行っているのですが、アルツハイマー型認知症の場合アセチルコリンという神経伝達物質の減少が見られます。

レミニールはアセチルコリンによる神経伝達を助けてくれる薬です。

3.リバスタッチパッチ・イクセロンパッチについて

認知症の薬の中で、唯一貼るタイプの薬であるリバスタッチパッチ・イクセロンパッチは軽度または中度のアルツハイマー型認知症に効果がある薬です。

先ほどのアセチルコリンエステラーゼを阻害し、神経伝達を助けるという点はほかの薬と同じなのですが、この薬は同時にブチルコリンエステラーゼも阻害するという働きを持っています。

そのため、ほかの薬で効果が見られない場合や、大きな副作用が見られた場合にこの薬に切り替えることがあるようです。

4.メマリーについて

メマリーは中度および高度のアルツハイマー型認知症に効果がある薬で、これまで紹介した薬とは少し違った働きをします。

アルツハイマー患者の場合、異常なタンパクによって、グルタミン酸が過剰な状態になってしまいます。グルタミン酸が正常な量であれば記憶できるようなことも、過剰状態にあると記憶できなくなってしまいます。

メマリーにはこの過剰なグルタミン酸の放出を抑制し、正常な状態に戻そうとする働きがあります。

認可薬ではないものの今後に期待

現在は認可されておらず、サプリメント的な扱いのため、効果については触れませんが、今注目されている成分があります。
プラズマローゲンという成分ですが、今後認知症の新薬となり得るかもしれません。


認知症の薬について紹介してきました。
進行を遅らせるという類の薬しか今のところありませんが、十分に「救世主」となり得るのではないでしょうか。
軽度のうちに、進行が抑制できれば日常生活にあまり支障はない、と言えます。
もちろん人により副作用もありますので、用法用量は医師の指示通りに行ってください。

【テーマ④】認知症の薬とその副作用

これはどの薬にも言えることですが、薬には作用と副作用が存在します。認知症の薬にはどのような副作用があるのでしょうか。

順番に紹介したいと思います。

1.アリセプト(ドネジベル)の注意と副作用

ほかに持病のある場合は主治医の先生に相談が必要です。
過去の治療も含めて相談してください。特に心臓に疾患のある方は注意が必要です。
飲み忘れに気付いた時は、基本的にその時に飲んでください。
ただしいつも飲む時間より12時間以上間があいている場合は、その日は飲まず、次の日から通常通り飲んでください。
飲んだか飲まないか分からない場合は、重複での投与を避けるため、その日は飲まず次の日から飲むようにしてください。

副作用についてですが、代表的なものに消化器系の不調、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢などがあります。
多くの場合投与開始直後、または増量時に起こります。
軽度なものならば、様子を見ているうちに自然に軽快します。
これにも個人差がありますが軽度の場合は数日~1週間程度で治まることが多いようです。

副作用が強かったり、長引いたりするようであれば、整腸剤や吐き気止めを併用することで服用を継続することもあります。
使用して服用を続けるかどうかは、主治医の判断ですが患者さんの状態や、介護者の状態によっても異なります。

精神状態の変化

イライラや興奮状態、落ち着きのなさが現れる事があります。
脳内のアセチルコリンが増加することによって起こると考えられますが、これらの症状は認知症の症状の1つでもあるため、原因をよく考えてみましょう。

パーキンソニズム

脳内のアセチルコリンとドーパミンのバランスが崩れ、パーキンソニズムの出現・悪化の可能性が指摘されています。

2.レミニールの注意と副作用

レミニールの服用を急に中止すると、認知症の症状が急激に悪化する場合があります。
家族の方の判断ではなく、必ず主治医の指示に従ってください。
心臓に疾患のある方、消化器に疾患のある方、肝機能障害、腎障害のある方は内服に当たり注意が必要です。
現在治療中の病気、過去の疾患も含めて主治医に相談の上、服用してください。
代表的な副作用に、消化器系の不調や、めまいなどがあります。
内服を開始したときや薬の増量時に起こることが多いのですが、自然と体が慣れてくると症状が改善されることがあります。

3.リバスタッチパッチ・イクセロンパッチの注意と副作用

これもほかの薬と同じですが、現在治療中の病気、過去の疾患も含めて必ず医師に相談してください。
パッチは一日一枚までとし、二枚以上張ることのないように注意してください。
はがすときはやさしくはがし、はがした部分を濡れたタオルなどで拭いてあげてください。
貼り忘れに気付いた時はその時すぐに貼ってください。
翌日からはいつもと同じ時間に貼ってください。
副作用についてですが、かゆみや発赤などの皮膚症状、吐き気などの消化器症状が現れる事があります。
皮膚症状の予防には、前回貼った場所と違う場所に貼ることが有効です。

4.メマリー(メマンチン)の注意と副作用

メマリーには飲み始め、めまいなどの症状があるといわれています。
頭痛や日中の傾眠、食欲不振、便秘、血圧の上昇なども確認されています。
まれに見られる重篤な症状では、痙攣、失神や精神症状があります。
またこれらの症状は、認知症の患者さん本人では気付く事ができないことが多いので、介護者の方がやさしく見守ってあげましょう。

認知症の薬の副作用について紹介してきました。これはどの薬にも言えることですが、残念ながら副作用というものは存在します。

また認知症の患者さん本人では、副作用を訴える事ができない場合が多いので、注意して見守ってあげてください。

【テーマ⑤】今日からやろう!認知症の予防法

認知症の約6割を占めている、アルツハイマー型認知症。
残念ながら「認知症にならない」方法はありませんが、「認知症の予防法」はある、というのが現状です。
健康で長生きしたいと思うのは誰もが思うこと。
これから紹介する認知症予防を皆さんもぜひ実践してみてください。

食事で予防

まず、もっとも有効な栄養成分としてビタミンEの存在があります。
ビタミンEには認知症の発症を抑えてくれる働きがあると報告されています。
しかし一方で、ビタミンEのサプリメントではその効果が疑われていますので、なるべく食事からビタミンEを摂るようにしましょう。

またビタミンB群、βカロチン、ビタミンC、カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラルの摂取量の少ないことや、コレステロールなどの脂質の摂取量が過多になっていることも認知機能の低下につながるといわれています。
この事から言えることは、野菜中心の食生活にし、肉よりも魚から栄養を摂る食生活が有効だということです。

さらに、「酒は百薬の長」という言葉がありますが、赤ワインに含まれるポリフェノールにも、脳の働きを活性化させる効果があるといわれています。
日本酒もいいという人もいます。
いずれにしても飲みすぎはかえって脳に悪影響なため、たしなむ程度にしましょう。

またコーヒーが脳に良いことも分かっています。
コーヒーが苦手だという人は、一日2杯程度の緑茶でも良いようですよ!

その他の生活習慣での予防

その他の生活習慣での予防では、対人関係を持つ習慣、つまりなるべく人と関わろうということです。
また適度な運動も良いようです。
週3日程度の有酸素運動、はじめは30分程度のウォーキングで良いでしょう。

これは意外なのですが、30分程度の「昼寝」も脳の活性に良いようですよ。
ただし寝すぎは夜の睡眠に関わってくるので、あくまで「30分程度」としてください。

ヒントは認知症の前段階にあった

認知症に至る前の段階において、ある機能が低下していることが分かっています。
それは「エピソード記憶」「注意分割機能」「計画力」の3つです。
認知症に至る前にこれらの機能が低下することから、これらの機能を鍛えることによって認知症の予防につながると言われています。

1つ目の「エピソード記憶」ですが、これは体験したことを記憶して思い出す能力です。
2.3日以前の日記を後日つけることや、買い物した商品を思い出して、レシートに頼らず帳簿をつけることも有効だといわれています。

2つ目の注意分割機能ですが、複数のことを同時に行うときに、注意を配る機能です。
料理などをするとき、同時進行で2つの料理をするのも良いでしょう。
計算や仕事をてきぱきこなすというのも有効です。

3つ目の計画力についてですが、これは段取りを考えて実行する能力です。
将棋や囲碁、マージャンなどの、頭の体操とも言える先を読むゲームも有効です。
効率の良い買い物や、旅行の計画を立てるのも良いでしょう。

以上が認知症予防に効果的といわれている事柄です。
食生活などの部分に、聞いた事のある部分はないでしょうか。
そう、生活習慣病の予防こそが、認知症の予防だと言っても過言ではないのです。

健康に長生きという点は共通していますし、体に良いという事はいうまでもありません。
皆さんも是非「健康で長生き」をするために実践してみてくださいね。

【テーマ⑥】認知症サポーターとは

厚生労働省からの引用によると

認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の人やその家族に対してできる範囲で手助けする「認知症サポーター」を全国で養成し、認知症高齢者等にやさしい地域づくりに取り組んでいます。
認知症サポーター養成講座は、地域住民、金融機関やスーパーマーケットの従業員、小、中、高等学校の生徒など様々な方に受講いただいています。

引用元:厚生労働省 認知症サポーター

どうやってなるの?

特定非営利活動法人である「地域ケア政策ネットワーク全国キャラバンメイト連絡協議会」が行っている「認知症サポーターキャラバン事業」にて、『認知症サポーター養成講座』を受講し修了すると認知症サポーターになれます。

認知症サポーター養成講座は、都道府県や市町村の認知症対策窓口や高齢者支援を担当する課で、受け付けています。

講座の講師を務める『キャラバン・メイト』が指導を行いますが、開催には10人以上(自治体によって異なりますのでお問い合わせ下さい)の参加人員を集めることができる組織であれば、申し込むことができます。
地域住民・職域・団体・学校・企業などに関わる方であれば誰でも受講できます。
受講料は無料です。

講座は基本的には専用のテキストを使用し、約60~90分間かけて行われます。

認知症サポーター講座の主な内容

1. 認知症とはどのようなものか
2. 認知症の症状について(中核症状と周辺症状)
3. 認知症の診断や治療について
4. 認知症の予防について
5. 認知症の方に接するときの心構えと介護者の気持ちの理解について
6. 認知症サポーターに出来ることは?

以上のような内容となります。

認知症サポーターに期待されること

1 認知症に対して正しく理解し、偏見をもたない。
2 認知症の人や家族に対して温かい目で見守る。
3 近隣の認知症の人や家族に対して、自分なりにできる簡単なことから実践する。
4 地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携、ネットワークをつくる。
5 まちづくりを担う地域のリーダーとして活躍する。

認知症サポーターになったから、こうしなくてはいけない、という事はありません。
仕事に対する資格のようなものではなく「認知症のことをもっと良く知って、実生活に役立てよう」「認知症の方やその介護者の方に、住みやすい世の中を作ろう」という取り組みです。

認知症はかつて「痴呆症」などといわれ、間違った偏見が持たれていました。
そういった偏見や間違った認識を改める取り組みだと言えます。

その上で、認知症の方やその家族の方のよき理解者になることを目指し、自分に出来る範囲での活動をすることが出来ます。
例えばその知識を人に広めるのも良いでしょう。または認知症の方や、その家族の方が困っているときに、「どうかしましたか?」と声をかけてくれるだけでうれしいものです。

そうした行いを積み重ねていくうちに、認知症の方が住みやすい世の中を作ろうという取り組みです。
また地域のまちづくりのリーダー的人材の育成も兼ねています。

認知症サポーターについて紹介してきました。
サポーター(応援者)という意味ですが、現在800万人以上の方が、認知症サポーターとして活動されています。
これだけの応援者がいる、というのは認知症の方や、その家族の方にとって心強いのではないでしょうか。

【テーマ⑦】認知症の薬以外での改善方法

認知症には薬があることは紹介しましたが、これらの薬は「認知症の症状を改善してくれる」といういわゆる特効薬のようなものではなく、「発症を遅らせる」という類の薬でしかありません。
発症を遅らせるといっても個人差があり、もちろん薬が合わないということも人によってはあります。

では薬以外での改善方法はないのでしょうか?
リハビリテーションという形で行われている、認知症の薬以外での改善方法を紹介したいと思います。
自宅でもできる簡単なものから、認知症施設で行われているものまで、紹介したいと思います。

回想法でリハビリ

認知症の患者さんは、新しいことは記憶できなくなってしまうのですが、昔の記憶というのは残っていることが多いようです。
そのためその人の持つ「思い出話」に相槌を打ち、聞いてあげるだけでもリハビリにつながります。

一般に「回想」と呼ばれる方法ですが、お子さんやお孫さんとの思い出話を回想させるのも良いでしょう。
それだけで脳の活性につながります。

 

作業療法でリハビリ

一般に作業療法と言われると、「軽作業」のようなものを思い浮かべがちですが、そうではありません。
家庭で出来ることですと、単純な家事の手伝いで構いません。

肝心なのは手伝いをしてもらった時に「褒めてあげること」「本人の作業に文句を言わないこと」だけです。褒めてあげることによって、認知症患者さん本人が「必要とされている」という満足感を持ってくれることが大切です。

集団で行うものですと、編み物やぬり絵、陶芸、折り紙などのレクリエーション的なものが多いようです。やはりここでも「人とかかわりを持つ」事によって得られる充実感で効果が上がることを期待しているようです。

なぜこのような作業が有効なのか紹介しておきます。指先を動かす細かい作業によって、脳の広い範囲を活性化してくれる、という働きがあるからです。

ご家庭でもこれらを応用した作業を「楽しく」行ってもらっても良いでしょう。

音楽療法でリハビリ

音楽を聴くと、曲によって気持ちが高ぶったり落ち着いたりするものです。
そこで出来るだけ、本人に思い入れのある歌を聞いてもらうようにして、手拍子や合唱、簡単なダンスなどで楽しんでもらうのも良いでしょう。

音楽療法の応用で、レクリエーションとして「カラオケ大会」を行っている施設もあるようです。

 

 

アニマルセラピー(動物介在療法)

私たち人間は古来より家畜やペットとして動物と密接な関係を持ってきました。
子供が大きくなり自分の元を巣立っていってから、動物を飼い始める人や動物をわが子のように可愛がる人を一度は見たことがあるはずです。

「世話してあげなくては」という感情を逆手にとって、アニマルセラピーを行うのですが、この「世話してあげないと」という感情が認知症の予防や改善に役立つことが分かっています。

これは当たり前ですが、動物が苦手な人に決して無理強いをしてはいけません。
ほかのリハビリにも言えることなのですが、「リハビリは楽しい」と思わせることで効果は上がります。

 


リハビリについて紹介してきました。
動物が苦手な人に無理強いをしてはいけない、というように人により同じ作業をしていても苦手に感じる人もいれば、その作業が好きな人もいます。
ご本人の記憶を紐解いてあげて、それぞれに合ったリハビリ方法を考えてあげましょう。

【テーマ⑧】認知症カフェとは

認知症カフェ(オレンジカフェ)とは、認知症の患者さんやその家族、介護や医療などの専門職、地域住民の方々が認知症について語り合い、認知症に対する理解を深めたり、認知症の方やその家族が住みやすい街を作ろうという活動の一環です。

認知症カフェは、その名の通り「カフェ」として飲み物や食べ物が出たりして、認知症の方やその家族、関係者が集うことの出来る場として開放されています。

また、高齢化社会にともなって、増え続けている高齢者の方の憩いの場としての活用もされています。
認知症に対する理解を深めようという目的で始められたのですが、認知症でない高齢者の方も「認知症カフェ」に行くことを楽しみにしているようです。

増え続ける認知症に対して

現在日本では認知症予備軍や、軽度の認知症の方も含めると、800万人もの認知症の方がいるとされています。これは実に65歳以上の方の4人に1人の割合です。

認知症はかつて「痴呆」などと呼ばれ、間違った見方がされてきました。そうした偏見とも取れる見方は、「認知症」という言葉の普及によってなくなってきたとも言えます。しかし、まだ「どんな病気なのか?」ということについては、残念ながら理解が進んでいるとは言えません。

そんな認知症カフェですが、厚生労働省が認知症施策推進5ヵ年計画(オレンジプラン)において、これからさらに増えるであろう認知症患者やその家族への日常生活・家族支援の強化の一環として認知症カフェの設置の推進を行っています。

そんな認知症カフェの成功例をいくつか紹介したいと思います。

単なるカフェにとどまらず・・・

まず認知症カフェでの過ごし方についてですが、これは基本的に自由なところが多いようです。
例えば旦那さんの付き添いできた奥さんが、普段出来ない買い物に出たり、庭にある畑を耕したり、趣味の書道に興じたり、と皆思い思いに過ごしています。
「カフェ」というだけあって、料理や飲み物が出るところがほとんどのようです。
中には、ワンコインの500円で、地域で取れた野菜などをふんだんに使った料理が、お腹一杯食べられるところもあるようです。

立地条件により異なりますが、一見して普通の民家と変わりない外観の場所を改装してあるところもあり、中も広々と30~40人の方がゆっくりと過ごせるようになっています。
介護保険による「デイサービス」というものをご存知でしょうか?
デイサービスが進化し、高齢者の方やその家族がめいめい集う、憩いの場という印象がピッタリです。
呼び方こそ「認知症カフェ(オレンジカフェ)」という呼び方ですが、認知症の方にとどまらず、高齢者を中心に様々な方が利用されています。
増え続ける高齢者。
その中で「交流の場」として1つの成功例といえるのではないでしょうか。